イギリスのジュエリーや時計など装飾品には、貴金属の種類を判別するためにホールマークが打ち込まれています。これは見るだけで貴金属の純度、産地、年代、製造メーカーなどがマークの種類で判別できる仕組みになっているのです。歴史はとても長く、1300年代のものが存在すると言われています。
時計はもともと大衆的ではなく、現代のようにステンレスなど低コストな素材が存在していなかったので、シルバー925(スターリングシルバー)や金(18k)が使われているものは珍しくありませんでした。
推測ですが、生産数が現代と比べ圧倒的に少ないので、ホールマークというルールを適用しやすかったのではないかと考えています。
あと、ケースなどを専門に製作する工房などが現代に比べ少なかったとも言えます。
例えば、925と刻印されているのは、いわゆるスターリングシルバーと呼ばれるものです。シルバーの純度が92.5%で、残りは銅などを混ぜ加工しているのです。
なぜシルバー100%ではないかというと、時計など金属を変形させて構築するものは、ある程度の硬さが必要となります。
100%のシルバーだと、純度が高いことにより柔らかくなり、少しの衝撃や力を加える事で変形してしまいます。これは時計のケース素材としては向いていません。時計にかぎらずアクセサリーでも同じと言えます。
銀無垢や金無垢は、空気に触れたまま放置しておくと酸化して黒っぽく変色するのですが、ホールマークがあることで、わざわざ試さなくても判別ができるのです。
アルファベットもホールマークに存在するのですが、これは書体やアルファベットを囲っている形でもいくつか種類が存在し、それを確認するとだいたい何年代に製作されたものかがわかる仕組みになっているのです。
時計だけに限らず、ジュエリーなどの貴金属や銀を使ったナイフやフォークなどの食器にも同じホールマークが使われていたりします。
現代のように量産するというよりは、個人で製作していた人もいるので、全ての貴金属にホールマークが入っているとは限りませんが、ちょっと年代物のものを見るとき、ホールマークを確認することにより正しいものか確認する基準となるわけです。
ウォルサムやハミルトンなどアメリカ発祥のブランドは、ホールマークはありませんが独自の方法で管理されている特徴をもっています。
見た目ではわかりませんが、蓋を開きムーブメントが見える状態にしてみると、まるで車のナンバーのように個別の番号が刻印されているのです。
これはブランドとしてもインチキができないというか、全てオープンになっているのが驚きです。番号から年代を知るだけでなく、機械のグレードまでもが同時に分かる仕組みになっているのはユーザーとしてもありがたい限りです。
見た目だけでなく、何十年や世紀をまたいでも製造年数や素材を確認できる、というのは確固たる技術と自信がなければできない事です。
先が考えられたルールが適用されていて、何十年もスタイルを変えずに受け継がれているのは簡単には真似できない事で、ブランドの高い質を感じさせてくれる部分です。
アンティークウォッチは、知れば知るほど魅力的な部分がたくさん出てきます。
バイヤー:合田圭四郎