戦場で評価されたトレーサー

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新技術や新しい文明の誕生とミリタリーの歴史は深く関わっています。インターネットは軍事用途から生まれたものですし、ゴアテックスなど画期的な素材もミリタリー抜きには語れません。

時計もそんなミリタリーの歴史に深く関わっており、懐中時計が当たり前の文化から腕時計が誕生したきっかけも戦場なのです。
はるか昔には、女性用の装飾品として時計付きブレスレットはありましたが、現代のように時間を見るという実用的な機能ではなく、あくまでも装飾品としての価値が高かったと言われています。

腕時計が誕生し、実用されるようになると今度は防水性能が求められるようになります。
戦場というハードな環境下で使用しても機能する時計が求められ、あらゆるブランドが新機能や素材など開発を続け、現代に続いているのです。
本来使用しない水中で使われることが普及したら、今度は暗いところでも時刻を確認できる視認性が求められるようになります。

トリガライトを使った自己発行システムも、時計の性能を大きく向上させたと言えるでしょう。

明るいところや照明を使って塗料に光を吸収させ、暗い場所で一定時間発光し時刻を確認する蓄光機能は、ないよりは全然機能的だったものの、一定時間以上暗所にいると完全に暗くなってしまい実用できない場合もあったのです。

1988年には、トリチウムを文字盤に直接ペイントした時計がアメリカ軍に採用されていましたが、規定以上の放射能が時計から検知され、より安全な時計の開発が迫られていたのです。

アメリカ軍の納入業社であったStocker & Yale社は当時、MBマイクロテック社が開発したトリガライトを米軍用のコンパスに使用していました。この技術を時計の用い、画期的なミリタリーウォッチの開発が進んだのです。

トリガライトを使用した時計のプロトタイプは、国防省の過酷なテストを見事にクリアし、2000年までの間に100万本も納品される事になるのです。

2000年にStocker & Yale社が時計部門からの撤退を発表したのですが、後に軍用品を収集するコレクターの強い要望により、トリガライトの開発元であるMBマイクロテック社がミルスペックモデルを蘇らせる事になるのです。

2000年までに生産されていたStocker & Yale社の時計は、ディスポーザブルウォッチとも呼ばれる、いわゆる使い捨ての時計で、壊れたり電池が切れたら迷わず捨てるというものでした。戦地で使われることがメインのモデルだったので、壊れている状態のものはダメージが多く、修理に結構な金額がかかると言われています。

アメリカのミリタリーウォッチは似通ったデザインの物が多いように感じますが、実はStocker & Yale社が時計部門から撤退する時、デザインの権利をいろんなところに売り払ってしまったとも言われており、様々なブランドでデザインが使われているようです。

現行のトレーサーはTYPE6から進化たモデル、MIL-Gで性能が大幅に向上し、かつ個性あるデザインに進化しているのです。

ミルスペックモデルと呼ばれるシリーズは、文字盤にトレーサーのブランド名が記載されていなく、Stocker & Yale社が時計を生産していた頃と変わらないスタイルというのがコレクターからも支持されている理由と言えるでしょう。

他社がリリースしているトリガライトモデルと比べると、トレーサーの時計はトリガライトが深い位置に配置されているのがわかります。
これには理由があり、実際に戦地で使われていた時にトリチウムの光が目立ちすぎ、敵兵に発見されたことから目立ちにくく、かつ視認性が落ちないように配置されているのです。

実際に戦地で使用されながら進化している数少ないミリタリーウォッチブランドがトレーサーなのです。

バイヤー:合田圭四郎

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