現行品にはない、オールドウォッチの魅力

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遅くなりましたが、2014年明けましておめでとうございます。
今年も持つのが楽しくなる、個性がありおもしろみのある時計をご紹介できればと考えておりますのでよろしくお願いいたします。

機械式時計に耳を近づけてみると、内部の振動している音が聞こえてきます。

時計の音をいくつか聞き分けてみるとわかるのですが、現行のクロノグラフやカレンダー付きの3針タイプなどに使われているムーブメントの場合、よくムーブメントの詳細などを見ていると、28800振動など書かれていますが、この場合1時間に28800回振動しているという事になります。

この数字を60で割ってみると480、つまり1分間で480振動します。
さらに60で割ってみると、8になります。ということは、1秒間に8振動しているムーブメントということになるのです。

たった1秒間の間に8回も振動しているということになるのですが、これを1年間続けるとすごい数字になります。
8×60(1分間)×60(1時間)×24(1日)×365(1年)=252,288,000

つまり毎日時計を着用していると、1年で2億5000万回以上も振動しているのです。

これだけ早く動いていると、内部が劣化しても仕方ないと思ってしまいます。早く動くことで高い精度を出すことができていますが、腕時計のようにいろんな姿勢で時計を着用していると、それだけ内部では重力がかかり、負荷が移動しているのです。

こう考えると、メンテナンスもせずに5年、10年と使い続けたらよほど劣化してしまうのが理解できてきます。8振動のようにハイビートなモデルを選ぶ場合、長く愛用したいのであればムーブメントに定評のあるブランドを選ぶべきといえます。

アンティークなどのオールドウォッチを見てみると、5振動のタイプが多いです。
1秒間に5振動なので、1時間に18000振動となります。
昔から映画など作品の中で使われる、いわゆる聞き覚えのある時計らしい音といえば、5振動または5.5振動の音となります。

この振動数が少なくなるにつれ、精度が狂いやすくなります。
船の中で使われていたマリンクロノメーターなど、何と1秒間に2振動しかしないものもあります。

マリンクロノメーターは動かして使うものではなく、台に固定して使うためほとんど姿勢差はありません。内部に手はかかっていますが、環境による影響があまりないため高い精度を出し続けることができるのです。船は進行していると常に体重移動するほど振られる乗り物ですが、しょせん90度傾くことなどあっては転覆ものなので、ある程度しか姿勢が変わることはないのです。

現行のムーブメントでも、懐中時計によく使われる王道の手巻き式ムーブメントは、腕時計用のムーブメントと違い誤差が出やすいと言われていますが、やはり振動数が少ないからだと言えます。

ハイビートなムーブメントは、上記で説明した通りすごい振動数になるため、部品の摩耗が激しく、劣化が早まると思われます。現代とは違い昔の時計の場合、ものによっては家一軒と等価とされるほど高価なものでした。

それほど高価とされていたのは、長く使うことを前提に製作されていたことと、製造時に高度な技術が使われていたためです。

メンテナンスを行いながら、何年も何十年も使い続けられ、現代のアンティークウォッチとして受け継がれていくのです。

なので昔の技術では劣化が早くなるハイビートは適しておらず、ロービートでいい精度を出すことに時計ブランドの技術が注がれていました。高い技術が使われているからこそ数十年、または百数十年経過しているにも関わらず使うことができるのです。

アンティークの中で名作と呼ばれるモデルは、やはりそれなりの精度を出すことに成功しています。現行の時計のように高い振動数であると、ある程度高い精度は出せるのですが、アンティークと同じ条件で時計を製作すると、技術を持っていないブランドであれば高い精度を出すことはできません。

ハイビートが主流の現行モデルにはない魅力が、ロービートのオールドウォッチには詰め込まれているのです。

バイヤー:合田圭四郎

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