当店では腕時計、懐中時計の他に掛け時計も取り扱いしています。
お客様へ時計を送る際、基本的には時刻を合わせて送るのですが、掛け時計に関しては電池を抜いて送っています。
時計の秒針には種類があり、1秒刻みで秒針が動く「ステップ秒針」と言われるタイプと、音を立てずゆっくり動く「スイープ秒針」に分かれます。
昔田舎の祖父母の家に泊まりに行った時など、寝る時に頭上にある掛け時計の秒針の「カチコチ音」が気になりなかなか寝付けなかった、という経験を持っている人も多いはず。
もちろんカチコチ音は1秒おきに動くステップ秒針なのです。
滑らかに針が動くスイープは音が気になりませんが、一昔前はスイープなんてものはなく、あっても高級で、ステップが時計の当たり前とされてきました。
掛け時計をお客様に送る際、当店では全て電池を抜いて送っています。
なぜ抜くのかというと、少しでも電池の消耗を減らすため、からくりやボタン操作があるものの誤作動を防ぐためなのです。
腕時計や懐中時計の場合は、お客様が自身で電池を入れるという行為はとても難しく、時計の知識を持っている方である場合や、専用の工具を必要とします。
しかし掛け時計の場合は乾電池である事が多く、誰でも簡単に蓋を開けられる仕組みになっているので、電池を抜いて送っても別段問題はないのです。
しかしこれにはもうひとつ理由があります。
特にステップ秒針のものにあることなのです。掛け時計は基本的に大きめなサイズの箱になるのですが、それにより小包ではないほどのサイズになります。
お届けされた先は、ご注文者自身が注文していて理解しているご自宅用ならまだいいんですが、会社など別の担当者が受け取る場合や、贈り物で心当たりのない第三者に荷物が届く場合など「なんだろうこの荷物」と荷物を揺すったりする場合があります。
この時に例えば内部から「カチッカチッ」と音が聞こえていると、思い込みで爆弾だと勘違いされる場合があるのです。
確かに、テレビなどでは箱のなかに入った爆弾から、時計のカチコチ音が聞こえる光景は珍しくありません。政治家の方など社会的地位の高い方、大会社の社長など知名度の高い方の新築祝いに掛け時計を贈ることがある場合、電池が入った掛け時計を送ることでとんでもないパニックを引き起こしかねないのです。
ウソのような話ですが、実際このような勘違いの事件が起こったこともあるそうです。
だから、掛け時計は勘違いされないためにも、動作確認後に電池は抜いてお届けするのです。
ステップ秒針は、時計らしい音といえば音なんですが、時と場合により誤解を招く音でもあるんです。
バイヤー:合田圭四郎