魅惑のオールドムーブメント

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複雑時計を代表する機械といえば、クロノグラフとなります。
クロノグラフとは、ストップウォッチを内蔵している時計で、スタートボタンを押し時間を計測します。

ストップウォッチというと、思い出すのは体育教師の先生です。いつも首からストップウォッチをぶら下げていたというイメージです。現代ではデジタル式が当たり前に普及してますが、昔は体温計と同じでアナログが主流でした。一昔前の映画など見ると、時代背景をきちんと反映している作品には使われている場合があります。

アナログのストップウォッチは見た目が懐中時計と似ているのですが、ストップウォッチ機能のみとなります。なので時刻を見ることはできなく、純粋に経過時間を計測するという目的のみとなります。

このストップウォッチと時計を組み合わせた機能が、クロノグラフとなるのです。
通常では時刻を表示しており、スタートボタンを押し計測をします。

時計とストップウォッチの複合という、複雑時計の中でも最もと言っていいほどスタンダードな形式となります。
クォーツ式ムーブメントが発表される前、つまり1960年代以前のモデルでは、当たり前に手巻きなどの機械式ムーブメントが採用されていました。

クロノグラフには名機と呼ばれるムーブメントがたくさん存在します。
その中でも知名度が高い一つのブランドがバルジュー(Valjoux)社です。もともとは独自でクロノグラフムーブメントを製作していたのですが、現在ではスウォッチ・グループに加入しているETA社に属しています。

有名な理由の一つに、かなり多くのブランドにベースのムーブメントとして採用されているからです。あまり聞き馴染みのないヨーロッパのブランドや、誰でも聞いたことのある超有名ブランドまでバルジュー社のクロノグラフは採用されているのです。

バルジュー社の有名なムーブメントとしてキャリバー23があります。
ロレックスの初期デイトナに使われていた機械であることが、日本人の私達にはブランドとしての凄さが伝わるのかもしれません。
そんなバルジュー社ですが、歴史ある会社なのでもちろん時代とともにムーブメントも進化しています。現行では整備しやすいなどの理由からメンテナンス性に優れたパーツを多く採用しています。

ベースとして使われるムーブメントのみに着目すと、現行のものは悪く言えば汎用性が高くあまりに多く出回ってしまっているので、機械としての価値はあまり無いと言えるのかもしれません。

昔の機械を見ると、今では高級なパーツが当たり前に使われているのがわかります。
まず、ストップウォッチの伝達をするパーツ。現行ではメンテナンス性に優れたカム式を採用しているのですが、昔のはコラム(ピラー)ホイールを採用している物があります。

外から見るとわかりませんが、使用感は全然といえるほど違います。
とにかく使用しやすいし、内部のクラッチやアームの動作に余計な不可がかからず安定します。

コラムホイールがなぜ高価なのかというと、製作の際に手間暇が大変かけられているのです。まず、金属を合わせて作っているわけではありません。もし合わせて作っている場合、いずれは外れてしまうからです。

金属の塊から削りだして作られるのですが、削る際に微妙な角度違いを起こすだけで動作に影響が出てしまいます。最近はオリジナルでムーブメントを製作するブランドが増えてきましたが、クロノグラフではコラムホイール式をあえて制作しているブランドが増えてきています。手間暇はかかるがそれだけいいものと認知されている証であると言えます。

昔のムーブメントが魅力に感じられるのは、こういう良いパーツが当たり前に使われているところでもあります。現行品にはない魅力が、オールドムーブメントには詰まっているのです。

バイヤー:合田圭四郎

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