懐中時計は大きく分類すると、蓋のあるハンターケースと呼ばれるタイプと、蓋のないオープンフェイスの2種類が存在します。
もともとオープンフェイスは読んで字の如くという印象ですが、ハンターケースはなぜそう呼ばれるのか聞かれることがあります。
狩猟をするハンターが使っていたことが起源という説があり、匍匐前進(ほふくぜんしん)で獲物を狙い撃ちするハンターのポケットに入っている時計のガラスを守るべく、ケースと同じ素材が蓋として使われたと言われています。
昔は文字盤の保護に本物のガラスが使われていた時計もあると言われており、そういった理由からも蓋が求められたのかもしれません。
現代はインターネットやソーシャルネットワークサービスで、最新の情報を簡単に手に入れることができますが数百年も前となると、インターネットどころかテレビや電話なども当たり前に存在しておらず、新しい技術や情報が浸透するまでにかなりの時間を要するので、技術の差が地域によって開いていたと思われます。
なのでハンターケースというものがどういうふうにヨーロッパの中で浸透していったのかは今となっては不明ですが、需要があり広まっていったのは確かです。
ハンターケースとオープンフェイスの中間のような存在で、ハーフハンターと呼ばれるものがあります。※デミハンターとも呼ばれます。
蓋の中央部分が繰り抜かれているデザインで、これにより時計の蓋を閉じていても時刻を確認することができる、という画期的なデザインです。このハーフハンターにはもう一つ呼び名があり、ナポレオンタイプとも呼ばれます。
フランスの若き英雄であり、皇帝に上り詰めたナポレオン一世の事を指しているのです。
なぜかというと、ハーフハンターはナポレオンが生み出した、という逸話があるのです。
ナポレオンは癇癪(かんしゃく)持ちであったと言われており、睡眠時間も一日三時間程度でかなり短かったと言われています。一つの場所にいつづけることができないほど、という説もありかなり時間には厳しかったのかもしれません。
そんなナポレオンの人柄からか、持っていた懐中時計の蓋を開くことがわずらわしく思い、持っていたナイフで蓋を繰り抜いてしまい、蓋を開かずとも時刻を確認できるようにしたことがナポレオンタイプの由来とされています。
貴族であるナポレオンが携帯していた懐中時計はもちろん金である可能性が高く、金であれば合金と比べ柔らかいので、ナイフでも蓋を容易にくり抜くことができた可能性もあります。
真相はわかりませんが、結果として蓋を閉じたままでも時刻を確認することができるというのは、機能性を向上させ斬新なデザインで斬新なデザインなので「機能美」と呼ぶにふさわしいのかもしれません。
バイヤー:合田圭四郎