だいぶ時間を費やしたケース素材、ムーブメントが決まり、ここからは当店のオリジナルアイデアを活かす部分となりました。
個人的にこだわりたかった部分が実は針なのです。
時刻を確認するのに針は必要不可欠で、時計の中でも必ず見る部分と言えます。必ず見る部分なので、シンプルで見やすく飽きのこないものを探しました。
数ある部品の中でも、常時動いている部品で、時間を知らせてくれるのはもちろんのこと、時計自体の印象に大きく関わる部分でもあります。針のデザインだけで、野暮ったくも見やすいともいろんな印象を受けるのです。
もともとのアンティークでは、まるで鐘のような形をした特殊な針が使われてました。最初は同じ針を別注で製作し取り付けようと考えていましたが、ここをオリジナルで製作してしまうと、もし錆など取り返しのつかない故障など引き起こした場合、代わりに使える部品がないことに気づきました。
オリジナルのデザインは復刻したかったのですが、ここはい視認性が高いブレゲ針を採用しました。
真っ黒い針ではあまりにありきたりすぎると感じたので、少し色を出したいと思いブルーカラーで仕上げました。
復刻だけであればこれでもう完成を待つだけなのですが、せっかくなのでもう一つ別のバージョンを考えたのです。
アンティークの復刻なので当たり前に文字盤の数字はローマン数字なのですが、日本人に最も見慣れた数字である、アラビア(算用)数字文字盤のタイプも製作することにしました。
実はこの時、同じ針を使うよりもいっその事違うバージョンにしてみたいという思いがあり、針も全く違うスペード型を採用したのです。
最初は針を選べるセミオーダーにしてみることも考えたのですが、ローマン数字文字盤にスペードタイプの針を合わせると何かしっくりこなかったし、セミオーダーの場合ご注文をいただいてから製作に入るので時間がかかることから、アイデアとしてはお蔵入りとなりました。
これでやっと条件が整い、あとは試作品の出来上がりを待つのみとなったのです。
どんな仕上がりになるのかとても楽しみにしながら、しばらく待ち焦がれる日が続きました。
バイヤー:合田圭四郎