マーヴィン懐中時計「Peace」制作裏話 その4

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デザインの素材が決定したら、次は中身のムーブメントを決めなければなりません。

ここでできる選択が、機械式かクォーツかとなります。
クォーツを選ぶと低コストで時計を作ることができ、しかも時計にあまり触れたことのない方でも安心して使うことができます。

懐中時計、または時計に触れたことがない人に持ってもらいたいのであれば、クォーツはありな選択肢だったと思うのですが、ここにはだいぶ悩まされました。

見た目は現代に合わせて変更したのですが、手巻き式ムーブメントの魅力をしってもらいたい、という強い思いは外したくなかったのです。

クォーツムーブメント動力を電池から得ており使われるボタン電池は、近年廃棄の問題で電気店などで回収しています。理由は、電池に含まれる水銀や鉛などさまざまな有害物質が環境に影響を与えているからです。

かたや手巻き式ムーブメントは、ゼンマイを動力として動くため、定期的なメンテナンスをする限り半永久的に使用が可能となっております。

今世に出ているアンティークウォッチを見ても、きちんとメンテナンスされた手巻き式時計は数十年経過しても、現役として使用することができるのです。
あまりこういった表現はしたくないのですが、機械式時計を使用することは本当に環境に優しく、まさしくエコなのです。

クォーツと比べると精度は悪い機械式ですが、使うほどに愛着が湧いてくるのも機械式なのです。

こうして悩んだ結果、ムーブメントに採用したのは手巻き式でした。

手巻き式の中でも実は種類がいくつもあります。
スイス製を使うことしか考えていなかったので、外の国のムーブメントは全然見てませんが、腕時計用を使うという選択肢がありました。

プゾー(Peseux)という現在ではETAと合併したメーカーで、手巻き式スケルトンの腕時計などに使われるムーブメントとなります。もともと腕時計用なので部品がとても細かく設計されており、振動数が1時間に21,600(6振動)なのが特徴なムーブメントです。
代表的なので、ノモスに使われているムーブメントでもあります。

そしてもう一つの選択肢が、機械式懐中時計の定番といえるユニタス(Unitas)製ムーブメント。これはもう王道の機械で、あらゆる懐中時計に使われるほど主流になっています。

懐中時計用には2種類あり、よく蓋のないオープンフェイスタイプで使われる、12時方向にリューズがあり6時方向にスモールセコンド(秒針)が配置された6497、3時方向にリューズが配置され6時方向にスモールセコンドが配置された、蓋付きタイプに使われる6498が存在します。
振動数は1時間に18,000(5振動)で、誰もが聞いたことあるような落ち着くリズムの機械となります。

オーガストレイモンド社が開発したユニタスムーブメントは、製作され数十年経過したいまでも大したマイナーチェンジは行われず、懐中時計や大型手巻き式腕時計の定番ムーブメントとして使われています。

もし時計を薄型、小型に開発するのであれば迷いなくプゾーを選択するのですが、今回の目的は復刻であり、1880年台のマーヴィン懐中時計の条件に近いムーブメントで選ぶと、ユニタスの6498が最も近い条件となりました。

これで外装、ムーブメントが決定。後は細かい部分を詰めていくだけです。

バイヤー:合田圭四郎

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