クルマやバイク、服など幅広いジャンルでなかなか「モデルチェンジしない」モデルが存在します。
スタイルが完成されていて、これ以上変化する必要がないモデルなど変わらず生産され続けます。
セイコー鉄道時計は、中身のムーブメントこそ手巻きからクォーツに変わりましたが、基本的なデザインは昭和40年あたりからほとんど変わっていません。
クォーツムーブメントと言えど、現行使われているのは7C系と言われるキャリバーが使われています。これはセイコーを代表するダイバーズウォッチや、盲目の人が文字盤の針を触って時刻を確認する、盲人時計などに使われています。
ダイバーズウォッチはそもそも潜ることを前提に開発されているので、かなりの気圧が時計内部にかかる事が前提とされています。
盲人時計の方は、針を直接指で触っても壊れないほど頑丈な状態に仕上げられているわけですが、それと同じムーブメントが鉄道時計にも使われているのです。
しかもよく見ると10年電池を採用しているので、相当実用的に使えるスペックなのです。
ガラス(風防)には通常の懐中時計と比べると強度が高く、透明度が高いアクリルガラスを使用しているので、視認性を損なわず使える仕様になっています。
シンプルなフルアラビア数字文字盤は時刻を誤認する可能性が少なく、まさに鉄道など1秒単位が大切な仕事に実用されるため開発されているのです。
耐えられる温度は-10℃〜+60℃と広く、車掌さんのポケットの中の温度を考慮しても充分なスペックと言えるでしょう。
現行の国産時計で考えると、電波やソーラーなどが採用されてもおかしくないのですが、屋外は大丈夫でも地下やトンネルなど暗い場所では活用できないからでしょう。
鉄道の社内は、音量の大きいスピーカーや計器など、高く磁力を発生するものが多く存在します。
通常、ある程度の磁気から時計を守るため、1種耐磁時計をクリアしている時計はよく見かけますが、鉄道内部でも耐えられる2種強化耐磁時計という強力な耐磁性をクリアしているのは、どんなことがあっても時刻が狂ってはならない鉄道時計ならでは、といえるでしょう。
バイヤー:合田圭四郎