エタポンとは誰が呼んだか、よく思いついた言葉だと思います。ETA社のムーブメントをポン付けした、という全く良くない意味の言葉です。
もともとETA社は、スイスで生産される機械式時計の多くに使われていた、最も汎用性の高いムーブメントメーカーとして多くのブランドへ供給していました。
ETAのムーブメントをベースに各ブランドが技術を駆使し、それぞれのブランドコンセプトに基づいた時計を開発していたのです。
全てのブランドがそうであればよかったのですが、そうではないブランドも存在していました。ETA社から供給されたムーブメントをそのまま時計に流用するブランドも存在していたのです。これがいわゆる、エタポンと皮肉を込めて呼ばれる原因なのです。
機械式時計であることにかわりないのですが、全くの無加工で搭載されている時計を快く思わない方が多いのも事実です。金額が金額なら自分自身でもそう思うかもしれません。あと、スーパーコピーと呼ばれる偽物にもよく使われるので、ネガティブなイメージを持つ方も多いと思います。最近ではETAではなく、ETAの中国コピー品のムーブメントがポン付けされていたりします。
そういう経緯があってからか、スウォッチグループ以外のブランドにムーブメントを提供しないと発表した、いわゆる「2010年問題」が発生しました。
独占禁止用に引っかかったのもあり、ムーブメントの供給ストップは行われませんでしたが、一気にではなく徐々に進んでいます。
資本のあるブランドは、オリジナルのムーブメントを開発しましたが、そうでないブランドはどうなっていくのか?
やたらと高騰し続けるETAムーブメントを相変わらず仕入れ続けていくのか、それともETAと互換性のあるセリタムーブメントに乗り換えるのか。はたまた中国で横行しているETAのコピーに心臓を換えていくのか。どれが悪いと否定をする気はありませんが、ブランドが持っているコンセプトと、マッチしているのかが気になります。
今の時代は、ブランドの本質を見極めやすいいい時代なのかもしれません。気になる時計は、背景までいろいろ調べると、仮にエタポンであっても納得できる、コンセプトにブレていない場合もあるかもしれません。例えば、中身よりも外装の装飾や素材にこだわっているブランドも存在します。
エタポンだからといって一概に否定的な見方をするのは、少し偏った考え方なのかもしれません。
信頼できる人の意見は進んで聞くべきだと思いますが、風評的なうわさ話にはあまり流されず、多くの意見よりもご自身の本音を優先して選んでいただければ、後悔のないモデルにたどり着けると思います。
バイヤー:合田圭四郎