名の通ったブランドになればなるほど、ブランドの個性が出てきます。
今でこそマニュファクチュールブランドが多くなり、独自のムーブメントを各社が開発するスタイルが多くなっていますが、その前まではスイス製の機械式ムーブメントで最も汎用性の高いと言われる、ETA社のムーブメントが採用されていました。
現在も多くのブランドでベースに使われているムーブメントなのですが、ここ数年では2010年問題(ETA社のムーブメント供給停止問題)やセリタ社の供給が進んだことにより、以前よりは減少していると思われます。
機械式時計のみを開発するオリスでも以前はETA社製ムーブメントがほぼ採用されていましたが、ここ数年でセリタ社にシフトし変わってきています。
セリタ社ムーブメントが供給され始めた頃は正直あまり評判がよくありませんでしたが、現在では精度も安定してきたと言われ、高評価も多くなってきています。
ベースムーブメントが同じものが供給されていても、各ブランドの企業努力により差が出てくるのが時計のおもしろいところです。もともとは40時間ほどのパワーリザーブのムーブメントを調整し50時間に変更したり、精度を高くしクロノメーターをクリアするなど、同じムーブメントなのに差が出てくるのです。こういった調整は、確かな技術を持っているところでしかできません。
「○○とムーブメントが同じ」などというキャッチコピーを見かけることがありますが、ベースは一緒でも加工に差がおもいっきり出ていたりします。
同じムーブメント、素材なのに価格が違うのはなぜか?という質問をいただく事がありますが、見えない部分で差がでていたりするのです。
見た目でも、ブランド名がローターなどパーツに刻印されている、個性のある仕上げが施されている、などオリジナリティが感じられる仕上げになっています。
オリスといえば、シースルーバックから見ることのできるレッドローターがブランドの特徴であり、アイコンでもあります。最近では300m防水のダイバーズウォッチなどにもシースルーバックが採用されることが多くなり、以前よりもよりレッドローターを見ることができるモデルが増えてきています。
ローターには「Swiss Made Oris High Mech」と記入されているのですが、実はこの仕様に変わってそんなに時間が経過していないのです。2002年に商標登録されてからは完全にレッドローターが採用されるようになったのですが、それ以前のモデルではシルバーカラーのローターであったり、ゴールドカラーであったりします。
最近のオリスのみを知っている人であれば、場合によっては偽物と思ってしまうかもしれませんが、まだアンティークとも呼ぶには早い中古のオリスにとても多く見かけます。現在ではそれだけムーブメントにも力を入れて開発している証拠とも言えるのです。
今ではすっかりオリスのアイコンとなっているレッドローターは、まさにブランドのアイコンと言えるでしょう。
バイヤー:合田圭四郎