お客様はしらないサイン

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少し前にウェブニュースで見かけた記事がありました。
東日本大震災の直後に発見された遺体を特定するのに、着用していた腕時計のフタ内側に記載されているメモがきっかけになったと書かれていたのです。

通常のクォーツ式時計は約2年で電池が切れてしまうため、電池交換をしながら使い続けます。もちろん電池交換は時計店でおこなうわけですが、出張や転勤がよほど多く、なかなか住んでいる地域にいない方でない限り、住んでいる地域の時計店にて電池交換をおこなうケースがほとんどです。

特別こうしなければならないという決まりはありませんが、時計店では電池交換の際にまるで暗黙の了解のようにおこなっている行動があります。

電池を交換する時計をお預かりし、まずすることはフタを外して電池を取り出し、そして電池切れなのかを確認した後に交換に取りかかるのですが、この時に裏蓋を確認するのです。だいたい電池交換に訪れてくれるお客様は常連の方であったり、かなりおつきあいの長い方なので、当店でお買い上げいただいた時計を持ち込まれるケースが多く、前回の交換時にいつ換えたのか日付をメモしているのです。

記載してある日付から数年経過していれば、電池交換の可能性が高いのですが、そんなに前でない場合は電池以外の可能性も出てくるのです。交換後には、前回のメモをきれいに消し、新たに本日の日付を記載した上で、お客様へとお返ししています。これをすることにより、わざわざメモ書きでお客様へ渡さなくても、次交換する時に前回いつおこなっていたのかがわかる仕組みになっているのです。

今回のニュースでは、フタに『TS』の文字が書かれいていたことから時計店が絞られたと書かれていました。
店名をフルネームで記載できれば一番いいのですが、時計の裏蓋はそんなに広くなく、日付を書くだけでも余分なスペースはなくなってしまいます。

なのでせいぜい書けても、店名または交換した人のイニシャル程度となります。

今回のニュースは、イニシャルの記載があったおかげで特定まで結びつけたと思っています。残念ながら時計店の方もお亡くなりになっていたとの事ですが、イニシャルが記載されていたことで、不明になっていたかもしれない方が特定できた大きなヒントであったと思っています。

また、身につけている物が個人を特定するヒントになるわけですが、時計のフタを開けてサインから探し当てた捜査員の方もすごい着眼点だと思いました。

自分はこの仕事をしているから、時計のフタの内側に記載があるかもしれないと考える可能性はあっても、異業種である捜査員の方がここに気づいたのは本当にすごいと素直に考えさせられました。

災害など天災はいつ起こるかわからないので、当店でもこういった状況の時にお役立ちできる情報になれるよう、サインなど特定できる方法を考えていきたいと思っています。

バイヤー:合田圭四郎

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